2026-08-29
「田舎の実家、正直もう誰も住まない。国に引き取ってもらうことはできないのか」
「相続放棄までは考えていない。預貯金はきちんと受け取りたいし、土地だけ手放せるなら一番いい」
こうした声に応える形でできたのが、2023年4月27日に施行された「相続土地国庫帰属制度」です。相続や遺贈で土地を取得した人が、一定の要件を満たせば申請によってその土地を国に引き取ってもらえる、という制度です。
ただし、施行から3年近くが経ち、実際の運用データが公表されるにつれて見えてきたのは「思っていたより通りにくい制度」という実態です。本記事では、最新の統計をもとに、この制度で実家や空き地を手放せる可能性と、その手前にある高いハードルを整理します。
相続土地国庫帰属制度は、正式名称を「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」といい、2021年の民法等改正とあわせて成立し、2023年4月27日に施行されました。相続や遺贈によって土地の所有権を取得した人が、法務局への申請と審査を経て、その土地を国に引き取ってもらえる制度です。
よく似た制度に「相続放棄」がありますが、性質は大きく異なります。相続放棄は、預貯金や他の不動産も含めて相続財産のすべてを放棄しなければなりません。一方、国庫帰属制度は「いらない土地だけ」を選んで手放せる点が特徴です。「実家の土地は不要だが、預金は受け取りたい」という埼玉県内の相続人にとって、選択肢の一つになり得る制度です。
ただし、「不要な土地を国が無条件で引き取ってくれる」制度ではありません。ここから先で見ていく通り、審査には明確な線引きがあります。
制度開始から2026年1月末までの累計で、申請件数は5,032件、実際に国庫への帰属が承認された件数は2,432件です。件数だけを見ると半分弱にとどまります。
地目別の承認率を見ると、差がはっきり表れます。
宅地でもおよそ半数、山林に至っては5件に1件しか通らない計算です。さらに注目すべきは、明確な却下78件・不承認80件に対して、取下げ件数が902件と桁違いに多いことです。これは、審査の過程や事前相談の段階で「このままでは通らない」と分かり、自主的に申請を取り下げた人が非常に多いことを示しています。
押さえておきたいこと
「却下・不承認になった人」より、「途中で諦めた人」の方がはるかに多いのがこの制度の実態です。書類をそろえ、測量や現地調査に時間と費用をかけたあとに、結局手放せないと分かるケースが少なくありません。
この制度には、申請の入り口で門前払いとなる「却下要件」があります。埼玉県内で相続される実家に当てはめると、次のようなケースが該当します。
つまり、建物付きの実家をそのまま国に引き取ってもらうことはできません。解体して更地にし、境界を確定させ、担保権を抹消して初めて、審査の土俵に立てる仕組みです。
却下要件をクリアしても、次は「不承認要件」の審査が待っています。ここで見られるのは、その土地を国が引き取ったあと、通常の管理・処分に過分な費用や労力がかからないかという点です。
「境界立会いで隣家と折り合いがつかない」「敷地の一部が近隣の生活道路として使われてしまっている」といった、埼玉県内の古い住宅地でもよく見られる事情が、そのまま不承認の理由になり得るということです。
申請前に確認したい3点
① 建物は残っていませんか?(残っていれば解体が前提になります)
② 境界は確定していますか?隣地とのトラブルはありませんか?
③ 抵当権など、担保が設定されたままになっていませんか?
※該当の有無や個別の判断は、最終的に法務局の審査によります。詳細は法務局または司法書士にご確認ください。
仮に審査を通過できたとしても、この制度は無償で使えるわけではありません。
これに加えて、却下要件をクリアするための解体費用・測量費用・抵当権抹消費用は先に自己負担で用意する必要があります。「まず持ち出しで数十万〜百万円単位の費用をかけ、8か月前後待った末に、それでも通る保証はない」——これが制度の実像です。
国庫帰属制度は「金額をもらう」制度ではなく、「引き取ってもらうために費用と時間を払う」制度です。それに対して直接買取は、金額と引き渡し時期が最初に確定する点が根本的に違います。国庫帰属を検討した末に「要件が厳しそうだ」「8か月も待てない」と感じた場合、買取という選択肢のほうが、抱え続けるリスクの期間を短くできることがあります。
相続土地国庫帰属制度は、条件が合えば有効な選択肢です。ただし、次の点を先に確認しておくと、無駄な費用や時間をかけずに済みます。
| 確認項目 | 該当すると通らない・進まない理由 |
|---|---|
| 建物が残っている | 却下要件に該当。解体して更地にしないと申請できない |
| 境界が確定していない | 却下要件に該当。確定測量が必須で、費用・期間がかかる |
| 抵当権など担保が設定されている | 却下要件に該当。抹消手続きが必要 |
| 崖地・急傾斜地である | 不承認要件になり得る(管理費用が過分と判断される可能性) |
| 隣接地とのトラブル・越境がある | 不承認要件になり得る(争訟なしに管理・処分できない土地) |
| 承認までの期間 | 標準処理期間8か月。手数料・負担金は通らなくても戻らない |
「建物を解体し、境界を確定させ、8か月待つ」だけの時間と費用をかけられるなら、国庫帰属制度は検討に値します。一方で、「そこまで待てない」「まず解体費用を出す余裕がない」という場合は、現況のまま相談できる直接買取のほうが現実的な選択肢になることがあります。
弊社は埼玉県全域を対象に、業界歴10年以上のスタッフが自社で直接買い取ります。建物が残ったまま、境界が未確定のまま、崖地・傾斜地、隣接地とのトラブルを抱えたまま——いずれも、現状のままでご相談いただけます。査定金額は最短即日でのご回答が可能です。
制度を使うか、手放すか。判断の材料になるのは、結局「いくらで・いつ動けるのか」という具体的な数字です。まずは金額を知ることから始めてみませんか。
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※本記事は2026年8月時点で公表されている統計・制度情報に基づいて作成しています。承認率や件数は今後の運用状況により変動します。個別の土地が要件に該当するかどうかの判断は、最終的に法務局の審査によります。具体的なご判断は、法務局・司法書士・土地家屋調査士にご確認ください。